学生時代から、最近の歯科治療を考えると随分とデジタルで出来る事が増えたように思えます。
大学を卒業して歯科医師となってから10年以上経ちましたが、当時を思い返しつつ
今回は自分が経験してきた中での歯科医院のデジタル化に伴って変わって来たことについてお話ししたいと思います。
レントゲンのデジタル化
私がまだ学生時代の頃はレントゲン撮影はアナログの医院が多かったです。
フィルムをレントゲン撮影の機械にセットして照射を行い、その後現像液につけて画像が出てくるのを待ちます。口の中に入るような小さなフィルムですと、しっかりと現像されればなかなか綺麗に現像され、細かい部分の確認はデジタルフィルムよりも行いやすい。なんて言われていました。
そんな中でも現像液がうまく反応しないと画像が荒れてしまったり、一部うまく映らなかったり、現像液が溢れてユニフォームが汚れてしまったりなどのトラブルも良くありました。
大きなパノラマフィルムになると現像機にいれるまでもたもたしていると感光してきまい綺麗に現像が出来ない事もあったり、フィルムのセッティングが逆になってしまうとうまく現像出来なかったりと…当時、歯科助手のアルバイトをしていたのですがよく怒られてたなぁというのを思い出しました。
いつの間にかデジタルが主流に
実際に今自分で歯科医院を開業してみて、レントゲンは全てデジタルですし、他の医院もほとんどがデジタルのレントゲンに変わっているかと思います。
デジタルの良い所はデータのやり取りが出来るので、インプラントや矯正を行う際にデータでレントゲンの画像を送信し、そのまま反映してくれます。
データですから、ソフトフェアにて細かい色調や濃度の調整も出来るので、見たい部位にのみフォーカスして見れるようになりました。かなり拡大して見れるようにもなったので、今ではアナログのフィルムよりも使いやすいかなと思っています。
この辺りは、一般的なデジタルカメラの普及と同じようなイメージかもしれません。
アナログの良い面もありますが、デジタルの良い面もありますよね。
アナログの場合、撮影して現像した写真はカルテなどと一緒に保管をしておかないとどの方のものかわからなくなってしまいます。
それがデジタルですと、当院の場合電子カルテの新規登録をすると自動でレントゲンの方も患者さん事のデータに分けてくれるようになっています。さらに、撮影後自動で保存、他のPCやiPadなどでもすぐに見られるようになっています。
少し前ですと、レントゲンを撮影をデジタルでしたとしても、その撮影をしたPCでないと画像が見れず、わざわざiPadなどで撮影し、患者さんにお見せしていましたが、現在ではそれすらも必要なくなりました。
とても快適です。
型取りのデジタル化
私が学生の頃はアルジネート印象(普段使いしやすいピンク色の型取り材料)や寒天印象(窩洞部に流し込みより部分的により綺麗に取るために使用)、もしくは保険適応外でのシリコーン印象(精度は良いが硬化してから外すのが大変。材料費も高いため普段遣いには向いていない)
などの型取り材を用いていかにスムーズに型を取れるか。が技術の一つになっていました。
が、ここ最近はデジタル化が進み型取りを口腔内スキャナーで行う事も増えてきています。
スキャナーの精度や速度も確実に進歩しており、現在では気軽にデータを取得しようと思えるほど身近になって来ました。
口腔内全体のデータを撮影しておけば患者さんが帰られた後にデータの整理を行う時間も取れますし、データ上で分析を行うことも出来ます。
当院では診療の間にどこかで一度データを撮るようにしています。そのデータを元に患者さんに説明をするとより理解がしやすく、治療に関しても説得力があると思っています。
口の中は見えないので、先生が何を行なったのか説明させてもよく分からない…という時代は終わりつつあります。
一昔前までは先生がしている事もよく分からないので、口を開けてなされるがままにするしかない。という事もあったかと思いますが、デジタル化が進むと治療の見える化も行いやすくなり、患者さん主導の元治療を行う事が出来るようになってきています。
デジタル上で患者さんとデータを共有しつつどのように治療を進めるを相談をして決める。実際に行なった処置も写真を撮影し、説明を行ってくれる。そんな歯科医院が増えつつありますし
少なくても私自身はそのように治療を行えるように普段から意識をしています。
実際に銀歯を外してみた際に内側に虫歯があり、綺麗に取り除いてから材料で補強しスキャナーで型取りをした所ですが、ここまではっきりと見えるので説明のツールとしてもとても有用であると思います。
治療内容を説明し、次回この部位に部分的な被せ物を合わせていく流れです。
自分の行なった処置を本人に見せて説明をしますので、かなり意識もします。
これを日々するかしないかでは自分自身の中でも覚悟が必要となってきますが、患者さんからすると分かりやすいと思いますし、どのような治療が行われたかの確認も出来ます。
患者さんと共有することによって日々治療を振り返る事も出来るので自分の技術の向上にも役立っていると思っています。
やっぱり喜んで貰えるのが一番ですね。
常に自分が行った診療と向き合っています。
技工所に即時発送
歯型取りをスキャンで行うと、その場ですぐにデータを技工所さんの方に送る事が出来ます。しかもデータ上である程度参考になる色つき、噛み合わせも自動で調整をしてあるものが送られます。そこから被せ物の製作が始まりますので、スムーズに連携を行えば被せ物が出来上がるまでの時間も短くしていく事も出来ます。
従来のやり方ですと
- 歯型をアルジネートで取る
- 院内で型に石膏を流す
- 硬化してから外して形を整える
- 技工所に郵送するために箱に梱包する
- こちらから郵送するか、技工所の担当者さんが来る日まで待つ
- 模型が届いてから担当の部署に届ける
- 模型を確認、改めて分割模型を行うために石膏を使用して状況を整える
- ワックスを用いて被せ物の形を作る
これだけ手間がかかっていました。それが今ではその場ですぐにデータを送信出来て、技工所の方も即時にデータを受信出来ます。
実は作る材料によっては技工所側でも届いた歯型、もしくは石膏を機械に読み込ませてデジタルデータに置き換えて設計をしている。という事もありますので、最初からデータで送ってある方が、技工所側も手間が少なくて済む。という一面もあります。
現状では保険診療の一部でしかデジタルの型取りが適応出来ません。今後はより多くの工程がデジタルで出来るように願っています。
被せ物もデジタルで設計、削る時代に
銀歯の製作の際など、現在でもそうですが、石膏で型を取ってある模型にワックスにて形を作り、それを金属を溶かして流し込み、置き換える。という工程を経て製作していましたが、最近では保険診療でもデジタル化が進んで来ています。
CAD/CAM冠という被せものであれば技工所側がデジタル上で被せ物を設計し、固いブロックを機械で削りだして歯の形を作る治療を行うことが出来ます。
2024年11月現在では歯科医院側は従来通りの粘土のようなアルジネート印象でしか行えませんが、今後は口腔内スキャナーのデータから製作出来るようになっていくのではないか。と期待されています。
6月からインレー形態であれば保険診療でも口腔内スキャナーでの印象を行えるように追加されました。
これは施設基準を満たしている医院でないと保険適応にはなりませんので確認が必要となります。
当院では既に申請済みとなっていますので製作可能です。
院内でのセラミックミリング(1Day Treatment)
自費診療とはなりますが、院内にセラミックや仮歯を削り出しが出来るミリングマシンを導入していますので、最短1度の来院でセラミック治療を行う事が出来ます。
ただ、条件が揃っていないとその日ですべて行う内容に無理が生じてしまい、不適な被せ物になりかねませんので、可能でしたら事前のご相談の時間があることが望ましいです。
特に歯茎が関係してくるようなクラウンの場合は一度仮の歯を入れてしばらく様子をみて、歯肉の安定を待ち、セラミックと置き換える。などの対応が必要となるケースが多くなります。
直接削りだしの材料で仮歯を作れれば審美的にも綺麗な物が入りやすいですし、特に見えてしまう前歯の部分での仮歯の際には喜んで頂けます。
特に、転倒して前歯が折れた、被せものが外れてなくしてしまった。などの急を要する場合に、院内でミリング出来ると特に助かります。
この辺りはデジタルで行えるようになりかなり便利になったと感じています。
患者さんとデータの共有が出来る時代に
当院では口腔内スキャナーで撮影したデータも患者さんと共有することも行っています。
実際に初めてカウンセリングにいらして頂いた際のデータを保存し、後々の治療の進み具合の確認で使用したり、定期検診の際に長年の経過をデータ上で比較をしたりと、撮影してあれば色々な事に用いる事が出来ます。
実際に撮影後、患者さんにはQRコードを読み取って頂くか、リンクを共有することでご自身のスマートフォンなどで3Dデータを見る事が出来ます。
今後の治療のイメージを掴みやすかったり、ご自身の歯並びや歯周病管理の問題点などがより理解しやすくなるので、なるべくスキャンデータを元にお話をする時間を設けるように意識しています。
矯正治療のシュミレーションのデジタル化
矯正治療を行う際のシュミレーションに関してもデジタルで行うようにしています。
全体矯正であればCT画像と口腔内スキャナーのデータをマッチングさせ、骨のある場所を確認しつつ歯の角度調整を行いなるべく骨のある場所への矯正移動を行うようにしています。
歯肉までの歯並びのデータと比較すると、どこに無理が生じやすいかをより理解出来るため再現度が高くなります。
矯正治療に関してはこちらをご覧下さい。
電子カルテと予約機能のデジタル化
電子カルテについて
個人的に一番の変化を感じるのがカルテと予約機能がデジタル化した事です。まずは電子カルテについて。
院内のカルテが紙から電子カルテに変わって来ている医院が増えて来ています。私の医院は新規の開業の時点で最初から電子カルテを導入していますので、管理が楽ですが、途中から変更する場合は移行するのがなかなか。大変な作業となります。
カルテが電子化してあると、患者さんとの何気ない会話の内容や行なった治療内容などを素早く打ち込む事が出来るため、とても便利ですし、以前行なった内容などもデータ上ですぐに確認をする事が出来るが助かります。
また、全てを紙で保管しているとカルテの保管場所も必要となってきますが、電子カルテの場合は色々な端末から情報を確認する事が出来ますし、何より保管する場所が少なくて済むのがまた良いです。
カルテを全て手書きで行うと、まず受付の時点でカルテの表紙や中身を手書きで用意をしないといけません。保険証は社保なのか、国保なのか、自費治療のみなのか。で分かりやすい用にカルテの色を最初から分けているので、その確認を行なう必要があり、色や名前の間違いなどがよくありました。
また、毎朝本日の患者さんのカルテを全て棚から出して用意をしておく必要があります。一人だけカルテが見つからない…なんて事もよくあり探すのも大変でした。
歯科医師が診療をした後でカルテに記入する内容が多岐に渡るので少しでも簡略に出来るようにとカルテ用に様々な言葉のハンコが用意されていて、内容に合わせて押していました。
複数人ドクターがいると使いたいハンコ待ち。のような時間があったくらいです笑
点数を暗記して記載、分からない部分は点数を調べて記載。
合計点数を電卓で計算して…記載。
これを受付に提出し、受付にて再度点数のチェック。間違いがあれば訂正確認を…という流れを一人ひとりに行なっていました。
これが電子カルテになっているとカルテは電子上(パソコンやタブレット)にありますので検索をするとすぐに出てきますし、アポイントの予約の画面からすぐに患者さんの内容を確認する事が出来るので、大幅に時間を短縮出来ます。
もちろん全ての内容を電子化出来ているわけではない事も多く、必要な書類は別途探す必要がある事もあるのですが、それでも以前に比べると楽になりました。
病名に合わせて必要であろう点数項目が出てくるので選び、必要な内容を記載する。点数は自動で計算してくれて、簡単なエラーチェック機能つき。
という形になりますので、問題なければすぐにお会計の流れに進む事が出来ます。
患者さん側からは違いが分かりにくいかもしれませんが、院内側での労力はかなり減らせますので、スタッフが余計な部分で気を揉む必要がなくなってきます。
予約管理のデジタル化
歯科医院の予約管理もデジタルで行なっている医院が増えて来たのではないでしょうか?カルテが電子の場合は大体がアポイント帳もデジタルになっているはずです。
デジタルのアポイント帳の良い所は患者さんが電話をしなくても予約の新規登録を行えたり、変更をする事が出来る点です。
※歯科医院によって運用方法が異なります。新規予約のみウェブに対応していたり、予約の変更には電話やメールでの対応が必須な場合もありますので確認をお願いいたします。
私の医院で取り入れているアポイントシステムでは、患者さんの予約からキャンセルまでを全てWeb上で行えるようになっています。
初回の予約も出来ますが、次回以降の予約に関してもWebから行えるようにしています。
こちらに関してはまだ行えている医院の方が少ないのではないかなと思っています。当院は開業当初からデジタルで予約の管理を行っているので出来ています。
また、専用のアプリケーションに登録をして頂けると、予約の事前通知や、キャンセル対応、治療データの共有などにも対応出来るようになっておりとても便利なものになっています。(その代わり、初期の登録がかなり面倒な感じになっていて、私もそこが少し困っています…)
治療の画像の共有に関しては整理して共有する作業が必要となりますので、ご興味がある方は治療の際にその都度お伝え下さい。
やはり患者さんが自由にいつでも予約の調整が出来るというのは医院にとっては良い部分が多いのではないかなと思っています。
電話にて予約の調整を行いたい人が複数人いた場合、院内の電話が鳴り続いてしまい、治療に支障が出る場合があるからです。
なり続いている電話が取れない。というのは院内で治療を受けている患者さんも気になってしまいますし、不安に思わせてしまう可能性もあります。
患者さんであっても人間ですから、突然のやむを得ない事情が出来て予定していた時間に来院出来なくなった。変更したい。でも電話がなかなか繋がらない…
こういう事態になりかねません。もちろん電話で直接お話ししながら予約の調整を行うのは確実なのですが、他にも予約の調整方法が何かしらある方がお互いにとってのリスク管理になります。
そういう意味でも予約管理のデジタル化は良い面もあるかなと思っています。
また、公式LINEでの予約の調整や治療内容の相談にも対応しておりますので、都合が良い方でご予約の調整をして頂けます。
お会計のデジタル化
最近ではどこでもお会計のキャッシュレス化が進んでいます。もちろん歯科業界でも進むべきなのですが、この点に関してはかなり遅れているのではないかと思っています。
というのも、カルテとの連携が取れるかどうか。システムを導入できるスペースがあるか、運用費をどうするか。など考える事も多く、なかなか導入に踏み込めない医院の方が多いと思うからです。
元々医療業界は現金での支払いをするイメージが強く、変わり難い面もあり、現状ではキャッシュレスの会計を取り入れ始めた医院が増えてきた。という段階なのかなと思っています。
歯科医院でよくあるトラブルはお会計を行うスタッフがバラバラな場合があり、最後の閉め作業でお金が合わない。という状況がよくあります(よくあってはならないのですが…)
特に保険診療が3割負担と高齢の方が1割負担、自費診療は10割負担となるのでお会計の計算作業が難しくなる事もあり、その中で物販の購入や返金などが入ってしまうと何故か計算が合わない、という事が起こるケースが多いです。
どのお会計が間違っているのか、一人ひとり確認をする作業が入り、終わらないと気持ちよく帰れない…という事も今まで何回か経験した事もあります。
こういう細かな部分でトラブルが続くと、スタッフが嫌な気持ちになったり、お金の計算をする事が嫌になる方も出てきてしまいます。
それが、精算機やキャッシュレス決済の導入でそういったストレスから大幅に解消されますのこれも便利になったなと思う部分です。
閉め作業がボタン一つで進みますし、計算間違えが基本的にないので、お金の管理も安心しやすいです。
患者さんとしても支払い方法を選択出来るようになりますのでこの点は医院選びや通うメリットになるのかなと感じています。
便利さの代償にキャッシュレスの手数料や機械の維持費もかかりますが、患者さんに喜んで頂けたり、便利さの部分には勝てないと思いますので、必要経費と思って割り切っています。
まとめ
歯科医師として10年以上この業界を見て来ましたが、年々デジタル化が進んでいると思います。私自身が取り入れられていないデジタル機器も多く、歯科業界の最先端を進んでいこうとすると、かなりの投資が必要になってきます。
通って頂いている患者さんにより良い歯科医療を提供出来るように、歯科医師側も学ぶ姿勢を取り続け、新しい事にチャレンジし続けていく努力が必要だと思っています。
デジタル化がより進んだ先に、歯科医師としての働き方が変わってくる可能性もあるのかな。と思うとワクワクしてきますね。私自身、まだまだ学び続けたいと思います。
それではまた次回。
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